投資信託を勝手に評価するブログ

某機関投資家の社員としてファンド運用をしていた管理人が個人向けの投資信託について解説・評価しています。機関投資家向けのファンドと個人向けの商品とでは勝手が違いますが、なるべくわかりやすくお伝えしたいと思います。

グローバル・リート・トリプル・プレミアム・ファンド(毎月分配型)

ファンドの概要

運用方針

主に「CS グローバル・リート・トリプル・プレミアム・ファンド」を通じ、米国リートETF、米国外リートETFへ投資。加えてリートETFにかかるコールオプションの売却で、オプション・プレミアムの獲得を目指す。また、ミレニアム・グローバル社の投資助言により、毎月、金利が高い1通貨を選定、通貨のコールオプションの売却によるプレミアム収入と、米ドル売り、当通貨買いの為替予約による金利差の獲得を目指す。

出典:楽天証券https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/detail/?ID=JP90C00097T2

このように書いていますが、これだけではなんのことかよくわかりませんね!

この投資信託の運用方法は主に4つです

1つ目は、CS グローバル・リート・トリプル・プレミアム・ファンド(以下、グローバルリート)という外国籍投信を買うことで、米国リートに75%程度、日本、豪、英、仏など数か国のリートに25%程度投資をすることになります。この投資によって、グローバルリート資産の配当を得ることができますが、グローバルリートの価格変動リスクを負うことになります。

2つ目は、グローバルリートのカバードコール戦略です。これはグローバルリートの値上がり益を放棄する代わりに、オプションプレミアムを受け取り、利回りのアップを目指すものです。オプションプレミアムを受け取る代わりに、グローバルリートの値上がり益を取れないというリスクを負います。また、このオプションプレミアムは一定ではなく、常に変動するので、オプションプレミアムが想定外になるリスクもあります。

3つ目は、通貨のカバードコール戦略です。毎月1通貨を選択し、カバードコールを行うことで、オプションプレミアムを受け取る代わりに、円安メリットを放棄します。

4つ目は、ほぼドル資産である、グローバルリートの為替をヘッジ(対ドル)するときの、ヘッジプレミアムを受け取ります。この取り引きでは米短期金利よりも、高い短期金利水準の国の通貨買い、米ドルを売る取こととなります。対ドルでの円安進行による円ベースでの値上がりを放棄する代わりに、ヘッジプレミアムを得ることができます。また、ここで選択される通貨は3つ目の通貨カバードコール戦略で使う通貨となります。

お気づきになられたかもしませんが、グローバルリートの為替ヘッジでは「ドル売り・選択通貨買い」の取引を行っているため、最終的には選択通貨の変動リスクを取ることになります。つまり、選択通貨に対して円高が進むと為替差損が発生します。逆に円安が進めば為替差益にもなります。

今あげた4つの戦略の内容が理解できないようであれば、この投資信託を購入するのはオススメできません。

「グローバル・リート・トリプル・プレミアム・ファンド(毎月分配型)」は設定来(2013年~)からのトータルリターン(基準価格+分配金)が約20%と高いパフォーマンスを示しており、直近の資金流入も多く、楽天投資信託買い付けランキング1位となっています。(2017年6月27日現在)また、純資産も400億円を超えるかなりのヒット投資信託となっています。

しかし、私はこのファンドをしっかり理解して購入されている方はそう多くないと思っています。人気の高さの割にはファンドの仕組みがかなり複雑で、素人が買うような商品ではないように感じます。

その理由は先ほど上げた4つの運用戦略の複雑さです。

投資対象資産が多すぎます。リート投資が10か国以上、為替ヘッジが1通貨、為替ロングポジションが1通貨、オプション戦略が2本と、一般人が管理できるレベルではありません。

特に為替ロングポジションを取る通貨は高金利通貨になるので、十中八九新興国通貨になります。政治や経済が安定しない国の通貨は時に暴落します。その時運悪く選択通貨となっていれば、資産が大きく目減りする可能性も秘めています。

私の評価としては、高い配当利回りは魅力的ですが、運用初心者には向かない高リスクで、複雑な商品のため、オススメできるものではありません。